現在、日本のスマートフォン(スマホ)市場においてiPhoneシリーズの利用率は圧倒的です。ここ数年は概ね50%超のシェアを誇っています。そしてスマホという「日常的に身につけて持ち運ぶ精密機械」は常に、故障・破損などトラブルのリスクにさらされています。また、近年はスマホの高性能化・大型化に伴い端末価格も上昇、ともすればパソコンをも凌ぐ価格設定になっています。ですので、スマホが壊れてしまったからといって、簡単に買い換えられるものではありません。更に、昨今のサステナビリティ意識の高まりと相まって、スマホの修理需要は高まっていると言われています。当然、圧倒的シェアを誇るiPhoeの修理需要は大きく、多くの修理店が存在しております。
ですが、いざ修理をとなった時にどの店舗に依頼すれば良いのでしょうか?
多くの修理店がそれぞれにサービスを展開しており、それぞれに特徴があります。トラブルの内容やお客様の事情・方針によって、最適な修理店は異なります。ですので、現状どのような修理店がサービスを提供し、どのような特徴があるのか、メリット・デメリットなどについて、説明してまいりたいと思います。
尚、以下の内容は全て当店独自の見解となります。予めご了承の上ご覧ください。
修理店の種類
現在iPhoneの修理サービスを提供している店舗は、大別して「正規店」と「非正規店」に分類できます。「正規店」とはメーカー公認の修理店のことで、メーカー直営の「Apple Store」や、メーカーからライセンスを受けて直営店と同等のサービスを行う「正規サービスプロバイダ」があります。「正規サービスプロバイダ」は日本では「ビックカメラ」や「カメラのキタムラ」などが有名です。メーカー純正品のパーツを用いた正規の修理となり、メーカー保証(AppleCare+など)の対象となります。一方の「非正規店」とは、正規店以外の全ての修理店が該当し、互換品パーツを用いた修理を行います。
※例外として、非正規店でありながら純正品パーツを取り扱うことのできる「独立系修理プロバイダ」という店舗も存在しますが、日本ではまだほとんど見受けられませんので、ここでは解説を省かせていただきます。
それぞれの特徴を見てみましょう。
1. 正規店
メーカー公認の修理店です。「純正品パーツを用いた修理」「メーカー保証の適応」「修理後の保証」など、本来の修理という意味で言えば、この正規店での修理こそが唯一無二の選択肢となります。最初に書いてしまいますが、非正規店である当店的にも「まず第一に正規店修理を検討すべき」と思っております。ですが、これだけ多くの非正規店が修理サービスを行っている現状には理由があります。ひとことで表せば「正規店修理の敷居が高い」ことに尽きます。ここでは正規店修理の「敷居の高さ」を主に解説しますが、その敷居を超えられる方にとっては、最良の選択肢となるでしょう。
敷居その1:修理に時間がかかる
純粋に、正規店はその数が少ないと言えます。ユーザー数に見合う体制とはとても言い難いです。故に、近所に正規店が無いため郵送対応になったり、持ち込み修理の予約が中々取れなかったりと、修理にとても時間がかかることが多いのです。故障の内容にもよりますが「今すぐ直したい」といった場合、正規店では叶わないことが多いでしょう。
敷居その2:データが消去される
正規店では修理の際、全てのデータを消去(=初期化)します。これは、個人情報保護の観点によるメーカーの方針によるものだそうです。なので、正規店に修理を依頼する際には、事前のバックアップ作業が必要となるのです。具体的には「iCloud」や「iTunes」を使ってiPhoneのストレージ内にあるデータを保存することになります。日常的にバックアップ作業を行っている方にとってはそれほど敷居の高い作業ではありませんが、そうで無い方にとっては難しいと言えるでしょう。更に、修理後の端末にデータを復元する必要があるのですが、その作業も慣れていない方には難しいかもしれません。
また、正規店修理における最大の問題として「故障によりバックアップ作業ができない状態の端末を修理するとデータが全て失われてしまう」ことが挙げられます。この問題に対してメーカー(=正規店)の見解としては「日常的に「iCloud」や「iTunes」を利用してバックアップを取りましょう」つまり「データは自己責任で管理してね」ということだと思われます(あくまで当店の見解です)。
敷居その3:修理費用が高額
正規店での修理は一般的に、後述する非正規店と比べて費用が高額になります。というのも、実は正規店での修理はそのほとんどが「本体交換」によるものとなるからです。故障した端末を、全く同じモデルの交換用端末にsimカードを入れ替えたものと交換するのです。つまり「完璧に修理して電話番号もそのままですがデータは初期化した状態」という端末が返却されるのです。本体交換なので当然高額になりますが、流石に新品価格よりは安価になります。ちなみに交換用端末とは全くの新品というわけではなく、修理で回収したり、検品落ちした端末を利用して再生した「再整備品」となります。「ほぼ新品」と言えるでしょう。
また、正規店の修理は基本的には上記の「本体交換」となるのですが、故障箇所によっては「部分的な修理」も行っています。それは「バッテリー交換」と「フロントパネル交換」です。元々の端末はそのままで、バッテリーもしくはフロントパネルだけを交換しますので、当然本体交換より安価となります。ですが、この「部分的な交換修理」には注意が必要です。それは「望めばしてくれるわけではない」ということです。正規店が「部分的な交換修理」を行うのは、修理後の端末が「本体交換を行った時と同レベルの状態になる」場合に限定されます。例えば、画面のひび割れで「フロントパネル交換」だけ依頼したい場合でも、その他に何か問題(バッテリー消耗、カメラやその他パーツの不具合、フレームの傷など)が有った場合、受け付けてくれない場合があるのです。あくまで一例として、フレームのわずかな凹みのために「この端末の修理は本体交換です」と説明されたことも有ります。更に、例え「部分的な修理」を受け付けてもらえたとしても、データは初期化されてしまいますし、純正品パーツによる交換修理は、非正規店の互換品パーツによる修理より高額になることが多いのです。
尚、修理費用に関しては、メーカー保証(AppleCare+など)に加入していた場合「大幅に低く抑える」ことができます。iPhoneのトラブルで修理を検討する際は、最初に保証への加入状況を確認することをおすすめします。
ということで「正規店修理の敷居の高さ」について説明させていただきましたが、最初に書きました通り「この敷居を超えられる方」にとっては最良の選択肢で間違いありません。逆に、この敷居を超えるのが困難な方も多く存在するのも事実で有り、その方達の存在こそが、当店のような非正規店の存在意義となっているのです。
2. 非正規店
前述の通り、iPhoneのトラブル時の修理依頼は、まずは「正規店修理」を検討すべきだと思います。そして上記の「敷居の高さ」などを考慮した結果「難しい」と感じられる方には非正規店での修理がおすすめとなります。具体的には以下のような方になります。
- iPhoneのトラブルで操作不能に陥り、バックアップもない状況である(この場合は非正規店一択と言えます)
- 今後の買替えも見据えて修理はできるだけ安く済ませたいが、保証には入っていない(もしくは保証が切れている)
- 時間が無いのでできるだけ早く、手間無く修理したい
特に、最初の条件に当てはまる状況であれば非正規店一択と言えますが、データが消えてしまっても良いという方針であればその限りでは有りません。
では、非正規店での修理はどのようなものなのでしょうか。店舗ごとの違いも多々有りますが、概ね以下のような特徴があります。
- 故障したパーツのみ交換するので修理費用が正規店と比べて安く抑えられる
- メモリーやシステムには触れないため、データはそのままで修理が可能
- 一部の特殊な修理を除き、即日修理対応を行なっている
ここまでは良いことずくめに見えるかもしれませんが、残念ながらデメリットも存在します。主だったところでは以下になります。
- 使用パーツは互換品となるため、完璧に元の品質を取り戻せるわけではない
- 修理後にメーカー保証(AppleCare+など)が無効になってしまうことがある
- どのような症状でも直せるわけではない
基本的に非正規店での修理は「故障したパーツを交換する」ことで行なっています。そのためには当然ながら「交換するパーツ」が必要です。ですが、様々な理由により交換パーツが用意できない状況が存在するため、そういった修理は行うことができません。交換パーツが用意できない主な理由は以下になります。
- そもそも替えが効かないパーツの故障である(基板など)
- 交換用パーツが市場に出回っていない(新機種の場合など)
- 店舗の事情により在庫がない
これらの事情により、修理対応可能機種は店舗ごとに異なっているため、ご自身の端末および症状が対応可能かどうか、あらかじめ確認しておくことが必要です。
上記を踏まえ「非正規店の選び方に」ついて解説したいと思います。あくまで当店独自の見解ですので、参考情報としてご覧ください。
①まずは持ち込める範囲内の修理店を何店舗かピックアップする
非正規店を選ぶ理由のひとつとして「即日対応」が挙げられます。あまりに遠い店舗は非現実的だと思われますし、移動コストも無視できないでしょう。
②ピックアップした店舗すべてに問い合わせをしてみる
電話もしくはメールで問い合わせしてみます。できれば電話がおすすめです。トラブルの内容を伝え、その店舗での対応について説明してもらいましょう。修理費用や時間といった基本的な事項だけで無く、保証の有無やご自身の心配な件についても相談してみるのが良いと思います。特に費用については、提示された金額からの「変動要素の有無」を必ず確認しましょう。そこで、WEBサイトなどに記載のない項目が出てくるような店舗は注意が必要です。
③予算に納得でき、対応が気に入った店舗を選択する
店舗選択において予算は最重要項目のひとつであると言えます。ですが大事なiPhoneの修理です。「安ければ良い」とは言い切れません。多少他店舗より高額であっても、その理由に納得ができ、それがご自身の希望に合致し得るのであれば、選択する価値は充分あると言えるでしょう。また「対応が気に入った店舗を選択する」ことも大事だと思います。修理業はいわゆる「サービス業」に属する業種です。必ずとは言い切りませんが「サービス品質」と「問い合わせ対応の良さ」とは少なからず相関関係があります。「この店舗にまかせよう」と思える店舗が有ったのであれば、それが一番の選択肢だと思っています。
余談 登録修理業者制度について
余談ですが、非正規店に関して日本国内の制度として「登録修理業者制度」というものが存在します。これは、本来「電波を使った通信機器である携帯電話は「電波法」という法律によって厳しく管理されており、メーカー以外の修理は認められない」という日本の制度に対し「メーカー以外の者(=非正規店)が修理しても違法にならないための制度」となっています。現在100社弱の業者が登録しており「登録修理業者制度登録店(以下登録店)」として営業しています。
数ある非正規店の中から実際に依頼する店舗を選択する際、そのお店が「登録店」かどうかを基準にするのは、ひとつの要素として「有り」だと思います。但し、その場合は必ず「自分が依頼する機種&箇所が、そのお店で『登録されている』かどうか」を確認することをおすすめします。というのも「登録修理業者制度」とは、その業者で修理する「機種・箇所」をそれぞれ別々に登録する必要があるのです。例えば「iPhone7のバッテリー」や「iPhoneXSMaxのフロントパネル」など、全て別々の登録事項となっています。ですので、いざ「登録店」で修理した際に、その「機種・箇所」がそのお店で登録されていなかった場合、当然ながら「登録修理」とはなりません。実際に総務省のWEBサイトで確認してみると、業者様によって登録機種・箇所はかなりの違いがあり、概ね以下のように分類できます(あくまで当店独自の見解です)。
・自店で修理対応する全ての機種・箇所を登録している
・1機種のみ登録している
・比較的古い機種については登録しているが、最近の機種は登録していない
まず「全機種登録店」様は「筋金入りの登録店」と言って良いと思います。使用パーツや修理技術にこだわり、とても信頼できる業者様と考えて良いでしょう(筆者もこの「全機種登録店」様で数年の実務経験があったりします)。それに対し「1機種のみ登録店」様については、残念ながら「登録店」という称号のためだけに登録した業者様と思えます。もちろん、それでサービス品質を推し量れるものではございませんので、総合的に判断する必要があるでしょう。最後の「最近の機種を登録していない登録店」様は、制度に付いてこれなくなってしまった業者様だと思われます。新機種が出る都度に新たに登録し続けるのはとてもコストがかかるのです。1年に2機種が発売されていた頃はまだしも、近年のように1年4機種も発売されるようになると、全機種登録を断念する判断も致し方ないとも思えます。
さて、残念ながら当店は「登録店」ではございません。また、当面登録する方針はございません。その理由としては「制度およびその実態が、お客様のためになっていない」からです(あくまで当店の見解です)。詳細は割愛しますが、制度自体は立派なものなんです。ですが、実際の運用実態はとても理想とはかけ離れてしまっていると思われます。最大の問題として挙げられるのは「制度自体知名度が無く、内容を理解しているユーザーがほとんど存在しない」ことです。これは、管轄省庁である総務省による周知が全くされておらず、本来するべきである「ユーザーへの情報共有」ができていないからに他なりません。更に「登録店」に対する管理監督もいっさい行われておらず「書類が整っていれば登録する」以上の関与をしていないのが現状なのです。
その現状に対し「登録にはそれなりの費用が発生し、サービス価格に上乗せせざるを得ない」となれば、登録を躊躇するのもしかたがないと考えております。今後、制度の知名度や運用精度が高まってきたときに、改めて登録を検討する方針です。